3月3日14:45~16:35 招待講演

2015年2月3日更新


ビッグデータで多言語音声翻訳技術はここまできた
-2020年に言葉の壁を越える社会を実現するグローバルコミュニケーション計画-

この数年でスマートフォンで音声認識技術をベースとした質問応答サービスや多言語翻訳サービスを活用できるようになってきました。その背景には大規模な音声コーパスや対訳コーパスの構築が可能となった事や、大規模データに基づく新しい音声認識技術や翻訳技術の開発があります。さらには、DNN等の最新の機械翻訳技術によって更なる精度向上がなされつつあります。このようにして実用的レベルになった技術によって、2020年の東京オリンピックで多言語音声翻訳技術が普通のシステムとして利活用できるようにすることを目標とした「グローバルコミュニケーション計画」がスタートしています。本講演では、グローバルコミュニケーションの概要と、それを支える最新の音声処理技術、及び翻訳技術を紹介します。

講演者

隅田 英一郎((独)情報通信研究機構)

1982年電気通信大学大学院修士課程修了。 1999年京都大学大学院博士課程修了博士(工学)。 1982年~1991年(株)日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所研究員。 1992年~2009年国際電気通信基礎技術研究所 研究員、主幹研究員、室長。 2005年~2011年神戸大学大学院システム情報学研究科客員教授。 2007年~現在、情報通信研究機構研究マネージャー、グループリーダー、室長、副所長。 機械翻訳、情報検索、eラーニングに関する研究開発に従事。 2007年第2回アジア太平洋機械翻訳協会長尾賞、 2007年平成19年度情報処理学会喜安記念業績賞、 2010年平成22年度文部科学大臣表彰・科学技術賞(開発部門)、 2013年第11回産学官連携功労者表彰・総務大臣賞、 2014年第9回アジア太平洋機械翻訳協会長尾賞受賞。

河井 恒((独)情報通信研究機構)

1989年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了博士(工学)。 1989年KDD(現KDDI)に入社。 2000年~2004年国際電気通信基礎技術研究所(ATR)に出向。 2009年~2012年まで情報通信研究機構(NICT)に出向、研究グループリーダー、上席研究員。 2014年10月より現職。 音声合成、音声認識、音響信号処理、ロボット型端末、多言語音声翻訳技術に関する研究開発に従事。 2006年第22回電気通信普及財団賞テレコムシステム技術賞、 2010年平成22年度情報処理学会喜安記念業績賞受賞。

木俵 豊((独)情報通信研究機構)

1990年神戸大学自然科学研究科計測工学専攻修了。 1990年(株)神戸製鋼所に入社。 1993年神戸大学 自然科学研究科情報メディア科学専攻博士後期課程修了博士(工学)。 2001年(独)通信総合研究所(現情報通信研究機構)に入所。 2006年~2007年内閣府へ出向。 2007年(独)情報通信研究機構知識処理グループリーダー。 2011年同機構ユニバーサルコミュニケーション研究所長。 多言語翻訳技術、音声処理技術、情報分析技術、情報利活用技術、超臨場感技術に基づくユニバーサルコミュニケーション技術の研究開発のマネージメントを行うと共に、ユビキタス情報システムにおけるデータ管理技術、Cyber Physical Computing技術等の研究に従事。 2011年第56回前島賞、 2011年第43回市村学術貢献賞、 2012年第11回ドコモ・モバイル・サイエンス賞奨励賞受賞。

科学衛星データアーカイブの目指すもの

JAXA、NASA、ESAを始めとする宇宙機関が取得した科学衛星データは、短い占有期間のあと、 専用の解析ソフトウェアとともに、全世界に無償で公開されている。各国の公的機関が多くの予算と マンパワーを費やして構築した科学衛星データアーカイブは、人類共通の貴重な知的財産とも言えよう。 インターネットとPCに代表される情報技術の進歩により、データを使いこなす知識と スキルさえあれば、誰でも、どこでも、いつでも、最先端の宇宙科学研究を行うことができる。 本講演では、科学衛星データアーカイブの概念、開発の背景、およびその社会的意義について紹介する。

講演者

海老沢 研(JAXA)

1986年京都大学理学部卒業。1991年東京大学大学院理学系研究科天文学専攻終了 (理学博士)。 1991年宇宙科学研究所にて日本学術研究会特別研究員、1992年から2005年までNASA ゴダード宇宙飛行センターおよびジュネーブ天文台にて、主にX線を用いた ブラックホール天体の観測研究と並行して、複数の科学衛星データアーカイブの開発•運用に従事。 2005年宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所教授となり、現在に至る。 X線天文学の研究、科学衛星データアーカイブの開発・運用を行いながら、 データサイエンスの手法を天文データ解析に応用することにも興味を持っている。

3月4日8:45~10:15 特別セッション

ライジングスター2015

本企画では世界的に活躍をしている3名の若手研究者に講演して頂き、研究の成功・失敗などの経験談などを通して、参加者の研究の進め方や研究に対する姿勢などの点においてプラスとなることを狙いとしています。

講演者

荒瀬 由紀(大阪大学)
タイトル: 郷に入っては…新しい分野へのチャレンジを通して学んだこと

同一の事象や概念を異なる言語表現で表す言い換え表現は、知識抽出やWeb検 索、機械翻訳において重要な言語資源である。本講演では現在取り組んでいる構文解 析森アライメントによる言い換え表現抽出について紹介する。また私は博士号取得 後、就職したタイミングで研究分野を自然言語処理に転向した。その経験をもとに、 新たな分野に取り組む楽しさや苦労、失敗談や、新たな分野でも活きる博士課程での 経験も紹介する。

略歴

2006年大阪大学工学部電子情報エネルギー工学科卒業。 2007年同大学院情報 科学研究科博士前期課程、2010年同博士後期課程修了。博士(情報科学)。同年、北 京のMicrosoft Researchに入社、自然言語処理に関する研究開発に従事。 2014年よ り大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻准教授、現在に至る。 言 い換え表現抽出、日英統計的機械翻訳技術、Webデータマイニングに興味を持つ。

小沢 健史(NTT)
タイトル: Inside Apache Hadoop: オープンソース開発の様子と研究者としての関わり方

MapReduceのオープンソース実装である Apache Hadoopは、幅広く利用されている オープンソースソフトウェアの一つである。ここ数年の Hadoop コミュニティ界隈の 技術進歩は速く、2011年に公開されたリソース管理機構 YARN をきっかけに、 MapReduce だけでなくApache Spark,Apache Tezといった新たな処理基盤が Hadoop上で動作するようになり、大きな進化を遂げている。本講演では、Hadoopの アーキテクチャの変化と、その変化の中でオープンソースソフトウェアに関わる研究 および開発を行うことで得られた知見に関して述べる。

略歴

2010年筑波大学システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻卒。同年日本 電信電話(株)に入社。2013年度コンピュータサイエンス領域奨励賞受賞。2014年第9 回日本OSS奨励賞受賞。2014年12月よりApache Hadoopコミッタ。現在、NTT ソフト ウェアイノベーションセンタ所属。ACM、情報処理学会。日本データベース学会各会 員。

木村 英朗 (HP Lab.)
タイトル: 1000コアとNVRAM向けの新たなDBMS

サーバコンピュータは今変革の時にある。 次世代サーバは数千コアと巨大なDRAM、さらに莫大なNVRAMを搭載する。 これは既存DBMSが扱える範疇を超えている。 Hewlett-Packard Laboratoriesではこうした未来に向け、OLAP/OLTP双方を対象に 全く新しい設計のオープンソースDBMSを開発している。 この講演では、HP Labsの次世代DBMSプロジェクトの一つを ハードウェア/ソフトウェア双方の観点から、 既存の常識からの脱却の難しさをまじえて紹介する。

略歴

現在HP LabsのSystems Software for The Machineグループに所属。 HPの次世代サーバThe Machine向けにOLTPエンジンを開発中。 前職はMicrosoft Jim Gray Systems LabでSQL ServerのHadoop拡張に携わる。 2012年、Brown Universityで博士号および修士号(理学)を取得。 博士課程の研究テーマはAutomatic Database Design。研究指導教官はProf. Zdonik。 2005年、東京大学で学士号(工学)を取得。