国内で新型コロナウイルス感染症が引き続き拡大している現在の状況に鑑み、参加者を会議場に集めて開催する学会やイベントが中止・延期となっています。
電子情報通信学会データ工学研究専門委員会、日本データベース学会、情報処理学会データベースシステム研究会は、3月2日から4日まで「第12回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム/第18回日本データベース学会年次大会(以下「DEIM2020」、フォーラム委員長:宮崎 純(東京工業大学))」をオンライン上で開催しました。大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下「NII」、所長:喜連川 優、東京都千代田区)は、オンライン開催の環境構築に協力しました。
DEIM2020は、データ工学と情報マネジメントに関する様々な研究テーマの討論・意見交換を目的とした合宿形式のワークショップで、例年600名程度の学生や研究者、企業からの参加があります。DEIM2020実行委員会は、2月17日、新型コロナウイルス感染症拡大の状況に鑑み、福島県で行う予定であったDEIM2020のオンサイトでの開催中止を決めました。
日本データベース学会会長でもあるNII所長・喜連川は、「学生の貴重な発表機会を奪うべきではない。オンラインで学会を開催できるのはIT屋しかいない。我々が挑戦せずして誰がやる?」とDEIM実行委員会およびNIIによるチームを立ち上げました。
検討の結果、DEIM2020 は一部のセッションを除きオンライン会議の形態で開催するとし、技術上の実現可能性の検討、会議をスムーズに行うトレーニング等を含めた準備を進め、ノウハウを蓄積してきました。プログラムは、「口頭発表セッション」「インタラクティブセッション」「プレナリー講演」などから構成され、同時間帯に10のセッションを並行して実施するプログラムなどを含め、3日間で合計73の口頭発表セッション、2つのインタラクティブセッションを実施しました。NII本部(神保町)にDEIMフォーラムの進行状況をモニタリングし、オンラインによる円滑な議事進行のための技術的サポートを行う場並びに招待講演の場を設営し、多くの大型ディスプレイを導入しました。
各セッションの参加者は、Cisco Webex Meetings®(シスコシステムズ合同会社)を用い、自宅や職場、研究室などそれぞれの場所からオンラインでセッションに参加します。座長や発表者ならびに聴講者は、同一のセッション内で、発表や質疑応答を行います。また、多くの人数が参加する招待講演ではYouTube Live や LINE社の協力を得てLINE LIVEによって放映しました。
DEIM2020実行委員会とNIIの共同チームでは、リアルタイムにセッションを可視化したオンライン参加者動態モニタリングシステムを構築、試験運用し、学会参加者の動態のリアルタイム可視化にも成功しました。
参加者は563名。参加した学生からは「自分が気になったタイミングで質問をチャットに書き込めて質問がしやすかった」「発表初心者だったので緊張せずに発表できた」といった声が聞かれました。
DEIM2020は他の学会に先行してのオンライン開催となるため、3月5日~7日にバーチャル上で開催される第82回情報処理学会全国大会に情報提供を行うなど、DEIM2020の取組みやノウハウをオープンソース化しました。NIIでは、Webex MeedingsのAPIを用いてオンライン会議システムへの一括登録機能、各セッションの自動制御、各セッションのログモニタリングを開発し、支援しました。
DEIM2020フォーラム委員長・宮崎 純(みやざき・じゅん)のコメント:
「2週間という短い準備期間にも関わらず、NIIとDEIM実行委員会の皆様のご尽力により、オンサイトで予定していた口頭発表、インタラクティブ発表、プレナリー講演の全てを実施することができました。」
NII所長・日本データベース学会会長 喜連川 優(きつれがわ・まさる)のコメント:
「最近コロナウイルス感染症の拡大防止策により各所で学術に関する会議やシンポジウムの中止や延期が見受けられ、大変残念に思う。学生にとって人生で始めてで最後の研究発表であることも多い。この体験はその後の人生にとって極めて貴重であったと自ら感じ、その機会を奪うことだけは有ってならないと考えた。我々はIT屋であり、ITを駆使すれば、約600人の参加者という数字は大きいものの、DEIMチームとNIIが一丸となって取り組めばなんとかなると考え、2月17日にサイバー空間でのシンポジウムを決断した次第である。多くの関係者のご努力のおかげで無事にオンライン上でのシンポジウムを終えることができ、大変良かったと思う。同時に、ITの若手研究者が社会課題を自分の手で解決できるという自信が得られたことも喜ばしく感ずる。」